2026年度のオープンに向けてシズハモのリフォームが始まりました。
記念すべき最初のリフォームは玄関灯でした。乳白色の小さな一つだけの丸型灯です。
大正末期から昭和初期、このような乳白色の丸形カバーを被せた玄関灯が大いに流行しました。それまでの主流だった、裸電球、それに小さな傘をかけた照明よりギラツキが抑えられ、上品でモダンな照明として大正モダニズムの中、もてはやされました。
そんな時代でも100年前の時代を生きた文豪、谷崎潤一郎は随筆、陰陽礼賛 “In Praise of Shadows” の中で、電球よりも黒い漆器等が美しく映える燭台の暗い灯りを尊び、こう記しています。「見えすぎるものを闇に押し込めたい」。
近年はLED電球が普及して、さらに広く、より明るく照らし出すような照明が増えています。実際に明るい店舗ほどお客が集まる傾向があるようで、光の洪水には拍車がかかっています。
でも前述のように闇の中にこそ美しさがあるという伝統的な日本の考え方、ここで一度振り返り、もう少し大切にした方がいい時期かもしれません。
例えば古代から日本人の影に対するイメージはとてもポジティブでした。月影と言えば雲に映る影も含めた美しい月の光のこと。面影と言えば愛しい人のなんらかの実像のこと。木陰と言えば涼しくしてくれる快適な木の影のこと。影から、は見守る、助けるという言葉が付き物の言葉です。とにかく日本人は影が大好きです。
一方、日本語の影の直訳となる英語、shadowのイメージはネガティブで良くないようです。光の対極の存在。実体がない偽、あるいは隠すべき存在。恐ろしさを感じる存在。これらが、いわゆる光を遮ったことでできたshadowという言葉のイメージのようです。
シズハモでは、できる限り電灯の数を少なく、明るさも控えめにすることで、日本の影の美しさを呼び戻したい、と願っています。
玄関も看板も、もっと場所が分かりやすいよう、グッと明るくすべき、というご意見もあるかもしれません。でもここはあえて古来の美しさを保つため、ということでご不便をお掛けして大変恐縮です。美の源としての暗がりがある施設であること、ご理解いただければ幸いです。