カテゴリー: シズハモ

  • 2026年は午年、藤森神社が大賑わいです

    藤森神社にお参りしたところ、午年とあって藤森神社は初詣客で大賑わいでした。本殿前には長い長い参拝者の列。いつもの比較的静かな境内を散歩している身としては新鮮な景色でした。

    シズハモがその西門にほぼ隣接する藤森神社は京都御所から見て「午(うま)の方角」、つまり南に位置することから、古来、馬の守護神とされてきたそうです。

    さらに5月5日、菖蒲の節句発祥の地として古くから武士の崇敬を集め、その日に行われる藤森祭では本当にスリリングな数々の馬の曲乗り、駆馬神事を見るため、毎年多くの人が集まります。

    境内には馬グッズを集めた資料館、数々の馬の像もあり、普段から乗馬や競馬の関係者、ファンも参拝に訪れる馬の神社として有名です。今年は午年ということで馬の神社、藤森神社で馬グッズをぜひ、という方が集まったようです。

    ちなみに今年は年明けから、午年にちなむ4種類の御朱印や午年のお守り、絵馬、神矢、熊手、干支置物などの授与が開始されたそうです。臨時の大きな授与所ではたくさんの楚々とした巫女さんが忙しそうに働いていらっしゃいました。

    実はシズハモの茶道具の多くは藤森神社のお茶室で茶道を学ばれていた元巫女さんからもたらされたというご縁があります。大小様々な縁起物を笑顔で渡す巫女さんと、それを手に嬉しそうに福を家へと持ち帰る多くのご参拝の方々の姿を見ているだけでとても幸せな気持ちをいただきました。

  • 100年前の息遣い ― 大正ロマンの風が吹く、ちいさなおうちの物語

    今から約100年前は大正末期から昭和初期にあたります。


    伝統的な日本文化の中に西洋文化が入ったことで、人々が和と洋の良さを合わせるようになり、武士が支配した封建的な枠組みが失われて大正デモクラシーが進んだことで、大正浪漫と呼ばれる華やかで自由で明るい雰囲気を持った時代でした。その時代を生きたシズハモの建物と共に、少し当時の衣食住等へ思いをはせてみたいと思います。


    当時のファッションとしては、年を重ねた大人については着物姿の男女が依然として多かったものの、女学生は袴にブーツ、着物の下にフリルのブラウスを合わせ、若い男性(モダンボーイ)たちは、夏にはカンカン帽、冬には中折れ帽とトンビコートを翻し歩いていました。


    京都は内陸に位置し、電気冷蔵庫もまだなかったことから、野菜や穀物、川魚、塩漬けや乾物の海の幸、鶏肉等が主な食材でした。これらの多くは舟、馬車などの荷車で市内へ日々、大量の薪炭と共に運ばれていました。


    当時は各家の竈で薪や炭が炊事に用いられていたことから、京町家は気密性より排煙の効率性を重視した非常に通気性が高い造りになっていました。また、上水道、下水道が普及するまで、水は水瓶に井戸水を貯めて節約しながら使っていました。トイレは汲み取り式でたい肥として近隣の農家が利用していました。


    当時の伏見区の人口は今の数割程度と低かった一方、田畑が多く、宇治茶の重要な生産地ともなっていました。シズハモの周辺もかつては美しい野山と畑だったようですが、京阪鉄道が敷設された後、徐々に沿線に人口が増えて今の賑やかな街並みになったようです。


    皆さまは、アメリカの絵本作家バージニア・リー・バートンの『ちいさなおうち』のストーリーをご存知でしょうか。都会の波に飲まれ、忘れ去られそうになった古い家が、最後にもう一度思い出されて大切にされる物語です。この物語の中で家主は、ずっと先の時代まで大切にしてほしいとの思いを込め、家を大切に作ったとされています。この絵本の家はシズハモの町家にも通じるところがあるように思います。


    今の統計によると日本の木造住宅は駅周辺の再開発などのために平均30年で取り壊されているそうです。シズハモの京町家は戦災や阪神淡路大震災も乗り越えて、その3倍もの時を生き、この「ちいさなおうち」のように再び新たな光を浴びようとしています。


    今回のリフォームでは炭や煤を吸い込んできた廊下や柱、天井をあえて交換せずにそのまま活かし、この家の歴史として残そうとしています。一方、土葺き屋根の大量の土を下ろすことで、その重さに長年耐えられるように丈夫にかつ柔軟に作られたこの家の特別な伝統的な構造を活かします。そして、この先の時代にも多くの人に愛されつつ大切にされるような展示施設として残れる道を作る予定です。


    また、リフォームの様子など機会を見つけてご報告する予定です。時々シズハモ便りを覗いていただければ幸いです。

  • 「心で見なくちゃ、ものごとはよく見えない」—シズハモがセルフガイド形式を選んだ理由

    文化施設というと、講師から説明を受け、ガラス越しに展示物を見学し、短い体験をする、という形式を思い浮かべる方が多いかもしれません。

    シズハモでは、そうしたこれまでの一般的な形式とは異なる、講師の説明ではなく、来訪者が貸切の空間の中で自分のペースで見て学ぶ「セルフガイド」、自らの手で触って体感する「ハンズオン」という新しい形式を選びました。

    これは今の空間や時間に対して直接向き合う時間をゆっくりと楽しんでいただければ、との思いからです。

    茶華道に代表される日本の伝統文化は、古くから禅宗の根本的な考え方である不立文字、という言葉を最も大切にしてきました。これは本当に大切なものは他人の文字や言葉からではなく、自らが感じとるもの、という究極の教えです。

    フランスの作家サン=テグジュペリも著書『星の王子さま』の本の中で、「On ne voit bien qu’avec le cœur. L’essentiel est invisible pour les yeux. (心で見なくちゃ、ものごとはよく見えない。かんじんなことは、目に見えないんだよ。)」という有名な言葉を残しています。洋の東西を問わず、ブログ、動画全盛期にある現代人はつい心で感じる、不立文字的な考え方を忘れがちかもしれません。シズハモがそんな時代のひと時を顧みる場所になれば幸いです。